いずみいずみ

今回のテーマは「カオナシ」です!

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「千と千尋の神隠し」の「カオナシ」って何者?

カオナシ

なんとも不思議な「千と千尋の神隠し」という作品の中でひときわ異彩を放っているのがカオナシ。

カオナシは黒く半透明な影のような体に白いお面をつけています。お面なので表情はいつも変わりません。

 

言葉も「あ、あ」とか「え、え」とか、意思疎通できる言語を話すことができません。カオナシの感情を読み解くには、彼の行動と声の抑揚だけが頼りになります。

 

じつはこのカオナシ、もともとの宮崎駿監督の考えでは、ただの群衆の一人にすぎなかったらしいのです。

でも、監督の考えていたストーリーでは2時間の作品に納めることができなくて、どうやったら短くまとめられるだろうか──という思考錯誤の末に重要な役どころに昇格したのがカオナシというキャラクターなのです。

作品の後半は、このカオナシの暴走と、ハクを助けようとする千尋のがんばりが見どころになって進みますね。

「カオナシ」の声を担当した声優は、舞台俳優の中村彰男さん

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カオナシのセリフと言えば「あ、あ」と、なんだか頼りなさげな意味をなさないものばかりなのですが、驚くほどしっかりした方が声を担当しています。

それが中村彰男さん。

主に舞台で活躍している俳優さんで、シェークスピアの舞台劇など数々の作品に出演しています。テレビドラマでは銭形平次にも出演していました。

 

声優としての活動も多く「精霊の守り人」(2007年)ジュロ役や「もののけ姫」(1997年)、「千と千尋の神隠し」(2001年)カオナシ役など。

 

カオナシの声は実は難しい

考えようによっては、カオナシの声ってとても難しいですよね。

登場人物の表情に合わせるわけにもいかず、年齢もわからず、なにを考えているかもよく分からない。しかも言葉も不明瞭。

そんなカオナシのキャラクターを声だけで表現しようというのですから。きちんとした役者さんにお願いしたのは大正解だったのでしょう。

 

あのカオナシの声、気弱で、自信のなさそうな感じがすごく伝わってきますから。

そういえば2001年帝国ホテルで行われた「千と千尋の神隠し」完成披露記者会見で

 

「カオナシの声は誰が担当したのか?」

と聞かれた宮崎駿監督が

 

「何も知らない」

と答えたことから、いろんな憶測が飛び交いました。

 

いわく「カオナシの声は宮崎駿監督自身では?」「いや、きっと鈴木敏夫プロデューサーに違いない!」。宮崎駿監督の、そして「千と千尋の神隠し」の影響力の強さを物語るエピソードですね。

カオナシの正体は? さらにカオナシが登場する意味は?

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カオナシっていったい何者なのか? 劇場用パンフレットにはこう書かれていました。

湯屋のある世界とは別の場所から
やってきた謎の男。
己というものを持たない悲しい存在

どうやら、カオナシも千尋と同じく油屋のある世界とは別次元からきた者のようです。

 

たしかに八百万の神ではなさそうですよね。作品の冒頭、橋の上に立っているのに誰からも「人間臭い」と言われていなかったということは人間でもなさそうです。

ということは、あの半分透けた黒い体からして、海原電鉄の乗客たちと同じ死者なのでしょうか?  そうかも知れない、という気がしてきました。

宮崎駿が語るカオナシ

以下は宮崎駿監督がカオナシについて語った言葉です。

人を好きになったあまりストーカー的行為に出ることや耐えられないさみしさや、キれるという言葉に代表される鬱屈した感情の発露などはすべての人間が持つ本質である。カオナシは私たち誰しもが持つ性質を結晶させた現代日本人そのものだ

カオナシは現代日本人がもつある性質を結晶させたものと話していますが、これは特に若者に顕著な性質でしょう。カオナシは現代の若者を寓意的に表現したもののようです。

 

だれかと関わりたいのに、モノで釣って関心をかうことでしか相手と関わることができない現代人。なかなか皮肉ですが、確かにそういう人たくさんいます。

自分の言葉を持たず人の言葉でしかモノが言えない、自分の魅力ではなく相手の欲しがるものを与えることでしかその関心をつなぎ留められない。

 

これって、わたしには油屋の最上階の部屋に閉じ込められていた坊がそのまま成長した姿に見えてしまいます。自分を表現する言葉を持たず、気に入らないことがあれば暴れるところなんかそっくりです。

坊とカオナシの違い

坊には湯婆婆という保護者がいて行動を制限していたけれど、カオナシには保護者がなく欲望のままに行動しているというところが違いますが。

 

保護者のいる坊が暴れる感情の源は「思い通りにならない怒り」でしたが、保護者のないカオナシが暴れる感情の源は「自分を受け入れてもらえない寂しさ」のようです。

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カオナシにとって千尋は特別な存在です。ずっと橋の上に立っていても、それまで誰にも相手にされなかったのに、千尋だけはカオナシを見てカオナシに反応して会釈してくれました。それがとても嬉しかったのです。

千尋を追いかけて油屋に入りこんだカオナシは、千尋の欲しがっているお湯を出す札を取ってあげます。それを千尋が喜んでくれたのを見て、もっと千尋が喜んでくれることをしようと青蛙を飲みこんで言葉を手に入れます。

従業員と千尋の違い

ところが偽物の金を出せば従業員たちは喜ぶのに、千尋は金を欲しがりません。もうこれ以上、カオナシにはなにをどうして千尋の関心を引けばいいのか分からなくなり、困り切っているところに苦団子を食べさせられて暴走してしまいます。

 

どうすれば人とコミュニケーションが取れるのか分からず、でも一人では寂しくて、間違った方向に暴走してしまっているカオナシのような人・・・。なんだか犯罪者としてニュース番組でよく見かけるような気がします。

千尋が口に投げ込んだ川の神さまからもらった苦団子のため、飲み込んだものをすべて吐きだしたカオナシは、元の気弱な性格に戻り、銭婆の家に行きます。

銭婆の家で

銭婆はカオナシの名前を呼び、糸を紡ぐ手伝いをさせる仕事を与え「おまえはここにいな、あたしの手助けをしておくれ」と、居場所を与えます。誰にも認めてもらえなかったカオナシは、銭婆に名前を呼んでもらい、居場所と仕事を与えられました。

きっと気持ちは満ち足りて、あの仮面の下の表情も穏やかになったのではないかと思います。

 

だって、誰だって人に認めてもらいたいし、人の役に立ちたいし、見栄を張らずに安心していられる居場所が欲しいものですから! 銭婆のように包容力をもって接することができれば、寂しさからおかしな行動に出てしまう人はきっと少なくなるのではないでしょうか。

 

人と関わる術を知らない現代人が、満たされない寂しさから暴走する様子をカオナシとして寓意的に描いていますが、どちらかというと、銭婆との関わりがもっとも重要ではないかと思います。

すぐにキレて暴走するカオナシを作ってしまったのは、他でもない銭婆のように接することができない大人たちなんだよ、と、宮崎駿監督が言っているように思えて仕方がありません。

寂しいカオナシのセリフを2カ所抜粋してみました

カオナシの声は俳優の中村彰男さんなのですが、正確にはもう一人、青蛙役の我修院達也さんもカオナシの声を担当しています。カオナシは自分でコミュニケーションする言葉を持たないので、青蛙を飲みこんで青蛙の言葉でコミュニケーションするシーンもあるのです。

そんなカオナシのセリフを2カ所見てみましょう。

カオナシ「え、え」

千「欲しくない、いらない」

カオナシ「え、え」

千「わたし、忙しいので失礼します」

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これはカオナシが千尋の気を引きたくて、両手いっぱいに金を出して見せたときのやり取りです。このとき千尋は傷ついたハクが湯婆婆の部屋に行ったのを追いかけていて、最上階に行こうと急いでいるところでした。

カオナシは中年オヤジ?

そしてもう1カ所どうぞ。

カオナシ「これ食うか? うまいぞー。金を出そうか? 千の他には出してやらないことにしたんだ。こっちへおいで。千は何がほしいんだい? 言ってごらん。

千「あなたはどこから来たの? わたしすぐ行かなきゃならないとこがあるの」

カオナシ「うぅ・・・」

千「あなたは来たところへ帰った方がいいよ。わたしがほしいものは、あなたにはぜったい出せない」

カオナシ「ぐぅ・・・」

千「おうちはどこなの? お父さんやお母さん、いるんでしょ?」

カオナシ「いやだ、いやだ。寂しい、寂しい・・・」

千「おうちがわからないの?」

カオナシ「千欲しい・・・千欲しい・・・。欲しがれ!」

千「わたしを食べる気?」

カオナシ「それ、取れ!」

なんか、カオナシのセリフだけ見ていると、中年オヤジのようです。

「欲しい物あげるから、さぁ、こっちへおいで」って・・・。そうか、中年オヤジもキレる若者と同じなのか! だれかに認めてもらいたくて、だれかの役に立ちたくて、安心していられる居場所が欲しいのか・・・なんか悲しくなってきました(汗)

千尋も現代っ子

ところで、あまり言及されていませんが、このときの千尋の行動も、現代っ子だなぁと思うのです。千尋に欲がないからカオナシの出す金に興味を示さない、と、ほとんどは解釈されているようですが、10歳にもなれば金ピカのものに興味を示す方が当たり前だと思うのです。

 

もし興味を示さないなら、よほど裕福な家庭か、「知らない人からモノをもらってはいけない」と教えられているかのどちらかだと思います。

千尋の家庭は、父親が外国車に乗っていることからけっこう裕福だと思うのですが、たぶんアノちょっときついめのお母さんから「知らない人からモノをもらってはいけませんよ!」ときつく言われているからじゃないかと思うのです。

車

現代っ子ってそうですよね。いろんな怖い事件が起きているから、親は子どもにこう教えていますよね。「知らない人についていっちゃいけない」「知らない人からモノをもらっちゃいけない」って。世知辛い世の中だなぁと思いつつ、仕方がないか、とため息つきたくなります。その行動が千尋を救ったわけですけどね。

カオナシの正体は米林監督!?

米林

「カオナシのモデルは米林宏昌監督である」という噂が流れています。なにしろその発信源が鈴木敏夫プロデューサーですから、「これは間違いない!」と、誰でも思いますよね。ところがそうではなかったようなのです。

2014年7月から12月まで東京都小金井市の「江戸東京たてもの園」で開催された「ジブリの立体建造物展」のセレモニーに登場した米林宏昌監督本人の口からその真相が語られました。

実際はモデルじゃないんです。湯屋の外にカオナシが立っているシーンの作画をぼくが担当していたところ、それを見た宮崎さんが『麻呂(米林監督の愛称)にそっくりじゃないか』って。それをプロデューサーの鈴木さんがあちこちで宣伝しているんです。

なぁんだ、という感じですね。鈴木プロデューサー、ちょっと盛り気味に話しちゃったんでしょうか? すっかり「カオナシのモデルはアノ米林監督らしいよ!」って噂が独り歩きしちゃってます!

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カオナシ他のモデル説

ところで、カオナシの正体について「悟りを開こうとするシャカのじゃまをするマーラ、または人として正しい生き方を示そうとするイエスのじゃまをするサタンである!」とする説があります。その根拠として、千尋たち一行が海原電鉄に乗っている途中に窓から見えるネオンサインにはっきりと「サタン」と描かれている、というのですが・・・。

すみません、ウチのボロビデオでは分かりませんでした。見えたよ! あったよ! という方、いらっしゃったらゼヒ教えてください!

 

いずみいずみ

ちょっと悲しい現代人・カオナシのお話でした。いずみでしたー!