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構想16年、制作に3年をかけた長編アニメーション映画の大作「もののけ姫」は、1997年7月に公開された宮崎駿監督渾身の作品。興行収入193億円をたたきだし、当時の日本映画の興行記録を塗り替えたという名作です。

 

緑濃い森と白い毛皮をまとったヒロイン・サンの姿とともに、美しい旋律の主題歌が心によみがえるという人も多いのではないでしょうか。魅力あふれる「もののけ姫」の世界を主題歌にスポットをあててひもといてみましょう。

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「もののけ姫」の主題歌は、世界的カウンターテナー米良美一が担当

映画「もののけ姫」の主題歌「もののけ姫」は、作曲および編曲が久石譲さん。

「風の谷のナウシカ」以降、「風立ちぬ」までのすべての宮崎駿監督作品で楽曲を担当した名作曲家です。

そして作詞は宮崎駿監督自身。歌い手を誰に担当してもらうか考えていた宮崎駿監督はある日、ラジオで耳にした米良義一さんの歌声に感銘を受けたことから彼を抜擢したといいます。

 

わたし自身も初めて米良さんの歌を聴いたときには、総毛だつような衝撃を受けたものです。女性のように高い声なのに、やはり女性とは違う、どこか人間離れした神さまのような声と表現しては言いすぎでしょうか?

米良美一のプロフィールは?

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米良美一さんは1971年宮崎県生まれ。

神奈川県の洗足学園音楽大学在学中にテノールから、男性でありながら女声に相当する高音域を歌うカウンターテナーに転向しました。

大学卒業の後、オランダ政府給費によりアムステルダム音楽院に留学というから、どれだけ優秀だったかがうかがえますね。世界的カウンターテナーとして認められた実力派です。

映画「もののけ姫」の大ヒットにともない主題歌も話題となり、それまであまり知られていなかったカウンターテナーという男性歌手のパートが広く知られる切っ掛けにもなりました。

 

米良美一さんは先天性骨形成不全症という病気を患っているのですが、そのことを隠すなどさまざまな精神的重圧から一時その美声を失いかけたこともあるそうです。その後、病気をカミングアウトすることで克服。現在は病気と闘いながらも精力的に活動されています。

テーマ曲の歌詞から宮崎駿監督が作品に込めた意味を読み解く【動画もどうぞ】

さきほども書きましたが、主題歌の作詞は宮崎駿監督自身です。

 

そこには映画を補完する強いメッセージが込められているはずです。

どんな歌詞で、そこにどんなメッセージが読み解けるのか、実際の歌詞を引用しながら考えてみたいと思います。

“はりつめた弓の ふるえる弦よ 月の光にざわめく おまえの心 とぎすまされた刃の美しい そのきっさきによく似た そなたの横顔 悲しみと怒りにひそむ まことの心を知るは 森の精 もののけ達だけ もののけ達だけ”

これは誰の心情か?そして「おまえ」とは?

主人公アシタカがヒロイン・サンに寄せる心情をつづったものと読むのが自然でしょう。つまり「おまえ」はサンをさします

アシタカはサンの心を、ちょっとしたきっかけさえあればパンとはねてしまいそうなほど緊張していて、そのゆるぎない緊張の中で悲しみと怒りに揺れているように感じています。

そしてサンの横顔を人を拒む刃のように冷たい表情だと思っています。

けれど冷たいのに美しいと惹かれてもいます。

 

サンは人間ではあるけれど、山犬に育てられ人を憎んでいる存在です。「もののけ姫」は人と自然との対立を描いた映画ですが、いわばサンは自然側の代表で、アシタカは人間側の代表

 

お互いに組みする世界が違うのです。

だからサンのまことの心は森の精にしか分からない。人間側のアシタカにはわからない。きっとアシタカは知りたいのでしょうね。もっとサンと分かり合いたいのでしょう。愛する人と分かり合えない悲しみが伝わってきます。

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「もののけ姫」の感想から見えてくる現代人の生き方

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主題歌にはアシタカの、サンに惹かれる心と悲しみが込められていました。でも、裏を返せばサンにも同じことが言えるかもしれません。

 

サンは自然に組みする人間で、人間側のアシタカは敵。その敵がなにを考えているのか分からない。分からないけれど惹かれる。惹かれるアシタカの心を知りたい。

こう考えてくると、ここに描かれているのは自然と人間の対立という単純なものだけではないのではないかと思えてきます。国対国。人対人。いたるところに存在する対立すべてに通じるものではないだろうかと。

ただ自分の正当性ばかりを声高に主張し相手を知ろうとせず、屈服させることでのみ解決を図ろうとする姿にオーバーラップします。

 

けっきょく、アシタカとサンはどうなった?

お互いがお互いを認め、白黒つけない決着を選びました。それぞれがそれぞれの場所で共に生きることを選びました。嫌なことも上手くいかないことも丸ごと飲み込んで生きることを選びました。この二人の解決方法に現代人が学ぶべき知恵を見出せるのではないでしょうか。