いずみいずみ

今回は、賢くやさしく、ときに恐ろしい魔女・銭婆に迫ります!

銭婆は、油屋主人の湯婆婆の双子の姉。海原電鉄の「沼の底」駅から少し歩いた先に一人暮らしをしています。

 

顔も髪型も服装も、眉間のイボまでそっくりな二人ですが、性格はかなり違います。お金への執着の強い世俗的な湯婆婆と違い、銭婆は質素な暮らしぶり。

 

今回は銭婆に迫ってみようと思います。

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「千と千尋の神隠し」の銭婆は、湯婆婆にとって「目の上のたんこぶ」

いきなりこの分けのわからない世界に迷い込んだ千尋は、前半では強欲な湯婆婆に頭を下げてなんとかこの世界で生きていく術を見出します。油屋では怖い物なしのような湯婆婆ですが、弱いものが二つありますね。ひとつは息子の坊。これはいわば「アキレスのかかと」のようなものでしょうか。湯婆婆の弱点ですね。

 

そしてもう一つが姉の銭婆の存在です。見た目はそっくりなのに性格が正反対の湯婆婆と銭婆。湯婆婆は金ぴかの成金趣味で拝金主義。お客の八百万の神は大切にするけれど、人間には冷たく、食料の豚にしたり風呂釜を焚く石炭にしたりしてしまいます。

 

一方、銭婆は質素で静かな暮らしが好きなようです。でもその魔力は強く、湯婆婆にもひけを取りません。湯婆婆にとって銭婆は「目の上のたんこぶ」といったところでしょうか。

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銭婆と湯婆婆に違いはあるの?

この双子の姉妹の見分け方がよく話題にのぼるようです。外見は、顔も髪型も服装もアクセサリーもまったく同じです。声優もどちらも同じ夏木マリさんが務めています。でも、どうやら違いはあの青紫色のドレスの下に隠されているようです。

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湯婆婆と銭婆の違いは湯婆婆は胸元にイボが1つ銭婆は胸元にイボが4つ(原画 田中敦子より)

えっ!? 湯婆婆たちの着替えや入浴シーンなんてあったっけ?(いや、あってもあまり見たくないかもしれませんけど)。ないですよね。つまりこれって、見えるところに違いはないって意味ですよね。

噂はジョーク?

そもそもこの原画担当さんの言葉が書かれたところって、他にもいろんなスタッフさんがあれこれ好き勝手に喋っているような内容だったと思うのですが、明らかなウソやジョークがたくさん並んでいたから、これもジョークと思われます。

 

制作途中に描かれた宮崎駿監督のイメージボードによると、姉の銭婆はすらりとした6~7頭身で自信に満ちた表情。対する湯婆婆は2頭身で、どこか自信のなさげな表情。横には「コンプレックス」と添え書きされています。

 

湯婆婆は当初、よくできる姉(銭婆)をもつコンプレックスの塊というイメージだったことが分かりますね。「そっかぁ、湯婆婆も悩みがあるんだなぁ」なんて、妙に親近感を覚えてしまいます。

ゆっくりとした時間が流れるやさしい銭婆の家が理想の暮らしと人気!

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銭婆は、海原電鉄の沼の底駅からしばらく歩いた先に住んでいます。イメージとしてはイギリスあたりの田舎の家でしょうか。

 

もともと魔女はヨーロッパが発祥の地で、薬草などの知識にたけた民間の治療師などをさしたという記録が残っています。銭婆の家もその辺りのイメージから描かれているようですね。家の周りにはたくさんの野菜や薬草が植えられていて、魔力に頼らず自給自足の生活を送っているように見えます。

 

式神を使ってハクを追い詰めるという強力な魔力をもつけれど、実際の銭婆はとてもやさしく、穏やかな印象です。千尋たち一行を家に招き入れ、お茶でもてなし、よく話を聞いてくれます。

銭婆が与える影響

人に認められることでしか自分の存在意義を見出せないカオナシに仕事を与え、居場所を与えてくれる銭婆の家。ここに、理想の安らぎを見出す人も多いようです。銭婆の家のフィギュアもとても人気があるようですね。

 

銭婆の家を見ると、わたしはいつも梨木果歩さんの「西の魔女が死んだ」を思いだします。「西の魔女が死んだ」も、学校になじめず不登校になってしまった中学生の主人公・まいが、イギリス人のおばあちゃんの家で過ごすうちに自分を取り戻していく小説です。優秀であることを求められる現代社会で、だめなままの自分を受け入れてもらえる場所を望んでいる人ってたくさんいるのでしょうね。

銭婆のセリフは名言ぞろい!

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千尋が銭婆の家を訪れてからの会話は、この作品のなかでとても重要な意味をもちます。そのいくつかを紹介します。

1、おまえを助けてあげたいけど、あたしにはどうすることも出来ないよ。この世界の決まりだからね。

両親のことも、ボーイフレンドの竜のことも、自分でやるしかない。

ハクが盗んだ印鑑を返して謝って、それでなんとか助けてもらおうと思ってきた千尋に、銭婆はこう言いました。

千尋は10歳。小学4年生の女の子です。これまでなにか困ったことがあれば、すぐに親や先生に言って助けてもらうことしかしてこなかったでしょう。

 

でも、銭婆は助けてあげられないと言います。

 

基本、大人社会は自分のことは自分で解決しなければいけない世界ですよね。10歳の女の子には少し厳しいようにも思うけれど、確かに現実でも「この世界の決まり」ですね。

安易に手を貸さないということは、千尋を大人扱いしているということでもありますね。

 

2、一度あったことは忘れないものさ。思い出せないだけで。

これも重要なセリフです。どんな経験も人は蓄積していく。けして忘れない。

 

ただ、ちょっと思いだせないだけ──と。都合の悪いことは忘れたり、ふとした拍子に思いだしたり。人の記憶って不思議です。でも、記憶がなくなるわけじゃないんですよね。ほんとうにそう思います。わたしにも、思いだせない大切な思い出がたくさんあるなって思います。

ちょっと寂しいけれど。

 

この後、ハクの背に乗り油屋に帰る途中、千尋は幼い頃に川でおぼれかけたと母親から聞かされたことを思いだします。銭婆の言ったとおり、千尋は忘れていなかったのです。

 

千尋の言葉を受けて、ハクも自分の名前を思いだします。そして、自分が川の神で、自分が守護する川で千尋がおぼれかけたことも思いだします。

ハクもまた、名まえや千尋との思い出をけして忘れたわけではなかったのですね。ちょっと思いだせないでいただけなんですね。

 

3、「白竜、あなたのしたことはもう咎めません」

「おまえはここにいな。あたしの手助けをしておくれ」

「だいじょうぶ。あんたならやり遂げるよ」

最後にこの3つのセリフをあげます。

 

1行目は、ハクに対しての許しの言葉。

2行目は、カオナシに対しての仕事を与える言葉。

3行目は千尋に対しての信頼の言葉。

 

この3つの言葉は子どもを育てる言葉です。もし銭婆が坊の母親なら、きっと坊は今とは全然違った子どもになっていたでしょうね。ほんのしばらく油屋を出ただけで、最後には坊がずいぶんしっかりしていたのもうなずけます。

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銭婆の家で、千尋はプレゼントをもらう

みんなで魔法を使わずに、糸を紡ぐところから作ったヘアゴムです。

 

たとえ不思議の世界での出来事を千尋が覚えていなくても、このヘアゴムは大切にしてほしいなぁと思います。

後に大人になった千尋がこのヘアゴムを見て、思いだせない何かを心の底に探しながらふと温かい気もちに包まれる瞬間があるんじゃないかなって、そんな想像をしてしまいます。

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銭婆のように賢い大人って憧れますね! いずみでした!